キャビネットの鍵が鍵穴には入るものの、そこから全く回らなくなってしまうトラブルは、多くの人が経験する問題の一つです。この現象にはいくつかの原因が考えられ、それぞれに適した対処法が存在します。最も一般的な原因は、鍵穴内部に蓄積した埃や金属粉などの異物です。長年使用しているキャビネットでは、内部の部品が摩耗して生じた金属の粉が溜まり、シリンダーの動きを妨げることがあります。この場合、まずは鍵穴の清掃から始めましょう。エアダスターで内部の異物を吹き飛ばすか、掃除機で吸い出すのが安全で効果的な方法です。清掃後に鍵を差し込み、上下左右に小刻みに動かしながらゆっくりと回してみると、固着が取れてスムーズに動くことがあります。次に考えられるのは、鍵自体の変形や摩耗です。ポケットやカバンの中で他の物とぶつかり、気づかないうちに鍵がわずかに曲がっていることがあります。見た目では分からなくても、精密な鍵穴の中ではそのわずかな歪みが致命的となります。スペアキーがあれば、そちらで試してみることで、鍵本体に問題があるのかどうかを切り分けることができます。もしスペアキーで開くようであれば、変形した鍵の使用は中止し、新しく合鍵を作成するのが賢明です。また、鍵穴内部の潤滑不足も原因の一つです。しかし、ここで市販の機械油や食用油を使うのは厳禁です。これらは粘度が高く、埃を吸着して固まり、最終的には完全に鍵穴を壊してしまいます。必ず、鉛筆の芯を削った粉(黒鉛)を鍵にまぶして差し込むか、鍵穴専用のパウダースプレーを使用してください。これらの対処法を試しても改善しない場合は、シリンダー内部の部品が破損している可能性が高いでしょう。その際は、無理な力を加えず、鍵の専門業者に修理や交換を依頼するのが最善の選択です。