多くのマンションにおいて、玄関ドアの交換は個々の住人が個別に行うのではなく、管理組合が主導する大規模修繕工事の一環として一斉に行われるのが最も効率的かつ一般的な形です。しかし、全戸のドアを一度に入れ替えるというプロジェクトを成功させるには、入念な合意形成と複雑な段取りが必要となります。まず、このプロセスの第一歩は「長期修繕計画」への盛り込みです。玄関ドアの耐用年数は一般的に二十五年から三十年程度とされており、この時期に合わせて修繕積立金から費用を捻出する計画を立てます。一斉交換の最大のメリットは、スケールメリットによるコストダウンです。百戸単位で発注すれば、一戸あたりの施工単価を個人で依頼する場合の六割から七割程度にまで抑えられることもあります。また、マンション全体のデザインが統一され、資産価値が底上げされるという効果も見逃せません。しかし、実施にあたっては住人の合意が大きな壁となります。最新のドアへの交換を喜ぶ住人がいる一方で、「まだ使えるのにもったいない」「工事の際に家の中に他人が入るのが嫌だ」という慎重派も必ず存在します。これに対し、理事会や修繕委員会は、現状のドアの劣化状況(錆による穴あきや建付け不良など)を客観的な調査報告書として提示し、なぜ今交換が必要なのかを丁寧に説明しなければなりません。特に、最新の断熱・防犯機能がもたらすメリットを具体的に示すことが、納得感を得る鍵となります。施工会社の選定も重要です。一斉交換の実績が豊富な会社であれば、各住戸への説明会の開催から、工事日程の細かな調整、不在宅への対応までをスムーズにこなしてくれます。工事期間中は、一日に数軒ずつ順番に作業が進められますが、カバー工法を採用すれば住人は普段通りの生活を送りながら、夕方には新しいドアを手にすることができます。このとき、鍵の引き渡しやスマートキーの設定説明など、セキュリティに関する細心の注意も求められます。一斉交換を機に、オプションとして個別にスマートキーのアップグレードを選択できるような仕組みを導入するマンションも増えています。個人のニーズに応えつつ、建物全体としての機能底上げを図る。そんな柔軟な進め方が、住民満足度の高い大規模修繕を実現します。玄関ドアが新しくなったマンションの外観は、まるで見違えるように若返ります。それは、住人たちが協力して自分たちの資産を守り、未来へ繋げたという証でもあるのです。
マンション全体で実施する大規模修繕での玄関ドア一斉交換の進め方