「どんな鍵でも開けてみせます、作ってみせます」。そんな頼もしいイメージのあるプロの鍵師ですが、実は彼らですら「これはうちでは作れません」と、お手上げ状態になってしまう、極めて特殊な鍵が存在します。それは、一般的なディンプルキーや登録制の鍵よりも、さらに上の次元に存在する、超マニアックで高度なセキュリティを持つ鍵の世界です。専門の鍵屋ですら作製を断ることがある、そうした特殊キーにはどのようなものがあるのでしょうか。一つは、「特殊な構造を持つ外国製の鍵」です。ヨーロッパなど、鍵の歴史が長い国々では、日本の常識では考えられないような独創的なメカニズムを持つ鍵が開発されています。例えば、鍵の内部に磁石(マグネット)が埋め込まれており、鍵穴内部の磁石と反発・吸引し合うことで解錠する「マグネットキー」。これは物理的に削るだけでは複製できず、正しい磁力と極性を持つ磁石を、正確な位置に埋め込むという、極めて高度な技術が必要となります。また、鍵の先端が回転する仕組みを持つものや、電子回路と物理的な鍵が融合したハイブリッドなタイプも存在します。これらの鍵は、そもそも日本国内にブランクキーが流通しておらず、複製するための専用機械も存在しないため、物理的に作製が不可能なのです。もう一つ、鍵師を悩ませるのが「非常に古いアンティークキー」です。何十年、あるいは百年以上も前に作られた、骨董品のような鍵の場合、もはや製造したメーカー自体が存在しないことがほとんどです。当然、ブランクキーも設計データも存在せず、完全にゼロから手作業で作り上げるしかありませんが、その手間とコストは計り知れません。このように、鍵の世界は奥深く、私たちの想像を超えるような特殊なものが数多く存在します。もし、あなたの家の鍵がこうした超特殊キーだった場合、それを紛失するということは、もはや合鍵作成という選択肢はなく、錠前ごと交換するしかない、ということを意味します。鍵の価値は、その希少性と防犯性に比例して、重くなっていくのです。
鍵屋でもお手上げ?プロでも作製困難な超特殊キーの世界