鍵交換の費用を少しでも節約したいと考えた時、「自分でやれば安く済むのでは?」とDIYでの交換を思いつく人がいるかもしれません。ホームセンターやインターネットでは、交換用のシリンダーが市販されており、作業手順を紹介する動画なども簡単に見つかります。しかし、賃貸物件において、入居者がDIYで鍵を交換する行為は「絶対にやってはいけない」と断言できます。その理由は、技術的なリスクと契約上のリスクという、二つの大きな問題が潜んでいるからです。まず、技術的なリスクです。鍵(シリンダー)は、ドアの厚みや錠前の型番によって、適合するサイズや種類が細かく分かれています。もし、適合しない製品を購入してしまえば、それは無駄な出費になるだけです。また、たとえ適合する製品を用意できたとしても、取り付け作業には正確性が求められます。少しでも取り付けが甘かったり、ネジの締め方が不適切だったりすると、鍵がスムーズに動かなくなるだけでなく、本来の防犯性能を全く発揮できなくなってしまう可能性があります。安全のために行ったはずの交換が、逆に家のセキュリティを脆弱にしてしまうという本末転倒な結果を招きかねません。次に、より深刻なのが契約上のリスクです。前述の通り、賃貸物件のドアや鍵は大家さんの所有物です。それに無断で変更を加えることは、賃貸借契約における「無断での改造・修繕」を禁じる条項に違反する行為です。これが発覚した場合、大家さんとの信頼関係が損なわれるだけでなく、契約違反として損害賠償を請求されたり、退去時に「原状回復義務」として、プロの業者による再交換費用を請求されたりする可能性があります。結局、自分で払った部品代に加えて、さらに高額な費用を支払う羽目になり、「安物買いの銭失い」となるのです。賃貸物件の鍵交換は、必ず大家さんや管理会社の指示に従い、指定されたプロの業者に依頼する。これが、あなたの安全と財産を守るための唯一の正しい選択です。