鍵を正しい方向に回しているはずなのに、何の抵抗もなくクルクルと空回りしてしまう。この症状は、単なる方向の間違いや鍵穴の汚れとは次元の異なる、錠前内部の深刻な故障を示唆する危険なサインです。もし、あなたの家の鍵が空回りし始めたら、それは錠前の寿命が尽きようとしている証拠かもしれません。鍵が空回りする主な原因は、錠前の心臓部である「シリンダー」と、ドアの内部にある錠ケース(箱錠)を繋ぐ「カム」と呼ばれる部品の摩耗や破損です。鍵を回すと、シリンダー内部のカムが回転し、それが錠ケース内部のデッドボルト(かんぬき)を動かすことで、施錠・解錠が行われます。しかし、長年の使用によってこのカムがすり減ってしまったり、強い力がかかって破損してしまったりすると、鍵を回してもその回転力がデッドボルトに伝わらなくなり、結果として鍵が空回りしてしまうのです。この症状を放置しておくことは非常に危険です。現在はかろうじて施錠・解錠ができているとしても、いつ完全に機能しなくなるか分かりません。もし、外出時に施錠できなくなれば、家を無防備な状態のまま放置することになります。逆に、帰宅時に解錠できなくなれば、自分の家を目の前にして中に入れなくなるという最悪の事態に陥ります。鍵の空回りは、鍵を開ける方向とは全く関係のない、内部の物理的な故障です。そのため、鍵穴に潤滑剤を差すなどの素人療法では、絶対に解決しません。この症状が現れたら、迷わず、そして速やかにプロの鍵屋さんに連絡し、点検と修理、あるいは錠前一式の交換を依頼してください。専門家による適切な処置だけが、この深刻なトラブルからあなたを救う唯一の方法です。空回りは、錠前からの最後の警告。そのサインを決して見逃さないでください。