玄関の鍵の防犯対策というと、どうしても外側の鍵穴(シリンダー)の性能ばかりに目が行きがちです。しかし、巧妙な空き巣は、外側からではなく「内側」の鍵を操作して侵入するという、非常に厄介な手口を使ってきます。その代表的なものが、「サムターン回し」です。サムターンとは、室内側にある、指でつまんで鍵を施錠・解錠するための、あの「つまみ」のことです。サムターン回しは、玄関ドアに付いている郵便受けの投函口や、ドアスコープを取り外してできた穴、あるいはドアとドア枠の僅かな隙間などから、針金のような特殊な工具を差し込み、器用に操って、内側のサムターンを直接「クルッ」と回してしまうという手口です。この方法を使えば、どんなにピッキングに強い高性能なディンプルキーが付いていたとしても、全く意味がありません。いとも簡単に、音も立てずに侵入されてしまうのです。この非常に危険なサムターン回しを防ぐための、内側からの防犯対策がいくつか存在します。最も手軽で効果的なのが、「サムターンカバー」の取り付けです。これは、既存のサムターンの上から覆いかぶせるように設置するプラスチック製のカバーで、外部からの工具による不正な操作を物理的に防ぎます。カバーのボタンを押しながらでないと回せない仕組みになっており、ホームセンターなどで数千円で購入できる、非常にコストパフォーマンスの高い防犯グッズです。より本格的な対策としては、「防犯サムターン」への交換が挙げられます。これは、サムターン自体に特殊な機能が備わっているものです。例えば、普段はつまみが空転しており、ボタンを押さないと回せない「空転式」や、つまみの部分を取り外して保管できる「脱着式」などがあります。これらの対策は、専門の鍵屋に依頼すれば、比較的簡単に交換・取り付けが可能です。外側の鍵の強化(ディンプルキー化やツーロック化)と、内側のサムターン対策。この二つを両輪とすることで、初めて、あらゆる侵入の手口に対応できる、鉄壁の玄関セキュリティが完成するのです。
盲点!「サムターン回し」を防ぐ内側からの防犯対策